重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)として指定されている輪島市門前町黒島地区。羽咋市の時と同じく不思議なご縁のもと、この歴史ある黒島地区にて工事を行わせていただくことになりました。
現地調査のため初めて足を運んだのですが、想像以上に厳しい現実が目の前に広がっていて、詳細をここに記すことすらためらわれるほどの情景で、地震のエネルギーの大きさと恐ろしさを強く認識させられました。以前はさぞかし美しい町並みが広がっていたであろうことを想像させるような、素晴らしい歴史的に価値のある建物が多く見受けられ、今回被災してしまったことが非常に残念でなりませんでした。
そして、いざ今回の施主様のお宅を拝見すると、思考が一旦停止するほどの衝撃を受けたのです。「全壊」判定であることは事前に承知していたのですが、まさかここまでの被害とは。しかし、同時にひとつの思いが心の底からムクムクと湧いてきて、「今までやってきた工法と合わせて自分の持っている知識と技術をフル活用し、なんとかしてこのお宅を復旧させたい! よしっ、やってやるぞ!」という決意の声が自分の中から聞こえてきたのです。
「重伝建」とは国によって高い価値が認められた地域であり、日本の歴史や文化を未来に伝えるために重要な役割を果たしているそうです。そのような大切な地域の建物が被災したことで解体されるなんて、勿体ない! 一軒一軒の建物にはこの地の歴史が刻まれ、住み続けてきた人々の思い出がたくさん詰まっているはずです。微力ではありますが、私たちの力を是非使っていただきたいと強く思いました。
まずは、この地にて仕事をさせていただけることを非常に名誉に思いつつ、施主様の思いをくみ取り、またこのような立派な建物を建てられた先輩方の思いにも心を寄せながら工事を進めさせていただきたいと思いました。
2025年5月